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モルドバ料理店「NOROC」(後編)

可愛らしい店内

モルドバ家庭料理と本場ワインを楽しめるアットホームなお店!

倉田さんとディアナさん夫婦が経営する、東京・亀有にあるモルドバ料理店「NOROC」。手作りの素朴な家庭料理と、ワイン大国モルドバならではの豊富な種類のワインを楽しむため、日本人だけでなくさまざまな国の人たちが訪れています。

■さまざまな国の人が集い楽しいイベントも開催

店名の「NOROC」は「幸運」「喝采」「祝福」などの意味があるルーマニア言で、グラスを掲げて乾杯する時に使われます。「幸せな気分になる言葉」というディアナさんが言うように、料理やワインを楽しもうと「NOROC」にはさまざまな国の人がやってきます。日本人やモルドバ人はもちろん、ポーランド人、ルーマニア人、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人、カザフスタン人、ポルトガル人など東欧・中欧を中心に国籍豊かなお客さんたちが集います。常連客も多く、中には「NOROC」で知り合って結婚したカップルもいるそうです。

クリスチャン系のお客さんも多いのでクリスマスはもちろん、イースターや感謝祭、大晦日のカウントダウン、ハロウィーンなどさまざまなイベントも開催しています。イースターでは何色にも色付けしたカラフルなゆで卵を用意し、皆でカチンとぶつけ合ってから食べます。「パスカ」という甘いパンもイースター特有のもので、ディアナさんは年に1回だけ作るそうです。さらに、とろりとしていてブラックベリーとチョコレートの香りがするデザートワイン「カゴール」で乾杯し、炭酸で割って飲むなどみんなで楽しみます。。

こういった特別な日以外のイベントも時々開かれています。ギネスブック認定されたモルドバ最大のワイナリー「ミレスチ・ミーチ」のワイン試飲会は、予約だけでいっぱいになりました。そのほか、葛飾区のイベントに出店したり、都立水元公園のバーベキュー広場で「NOROC」主催のバーベキューパーティーを開いたりも。以前はモルドバ料理教室も開催していてとても好評だったのですが、お店があまりに忙しくなったので残念ながら今はお休み中です。

■手が込んだ店内の壁かけはディアナさんの祖母の作品

「NOROC」店内はモルドバ製の壁掛けやテーブルクロス、クッション、民族衣装などが飾られ、とても華やです。特に「プロソープ」と呼ばれる壁掛けには手が込んだ細かい刺しゅうやレース編みが施され、芸術作品といえるほど。それらの中で一番目立つ日本の暖簾のようなプロソープはディアナさんの祖母の手作りで、ディアナさんがとても大事にしている自慢の品です。

もともとモルドバでは、さまざまなモチーフを刺しゅうした「イエ」というブラウスやベストを作ってお祭りなどに着る習慣があります。基本形は胸元に刺しゅうが川の字に入り、腕には複雑なモチーフの刺しゅうが施されているもので、モルドバの女性の多くはこの刺しゅう技術を身に付けているそうです。

モルドバでは毎年6月24日を「イエの日」と定めていて、民族衣装を着て祝う習慣があります。「NOROC」でもモルドバ大使夫婦をはじめ大勢のモルドバ人が民族衣装を纏って来店し、みんなでお祝いしたといいます。

ディアナさんの祖母の手作りのプロソープ

■「NOROC」の人気メニュー「ベスト5」

「NOROC」のメニューは数えきれないほど豊富ですが、中でもモルドバならではといえる人気料理がいくつかあります。お客さんの注文が多い「NOROC」の人気メニューベスト5を紹介しましょう。

◇サルマーネ:野菜やひき肉、米をモルドバから仕入れたブドウの葉で包み、トマトスープベースに味付けしてオーブンで焼きます。他の東欧国はキャベツの葉で包みますが、ブドウの葉を使うのはモルドバならではです。サワークリームをかければ、より美味。

◇ペレメニ:豚肉・鶏肉、またはサーモンを手作りの生地で包んだ定番の水餃子で、幅広い層に人気です。さっぱりとした味わいなので、程よい酸味があるサワークリームをつけると相性がぴったり。

◇コルッツナッシュ:ホテルオークラのイベントでもお馴染みの一品。もちもちと弾力がある手作りの皮の中にやはり手作りしたチーズがたっぷり入っていて、ワインにとても合います。

◇ニシンのマリネ:日本人はあまり食べないニシンを使い、オニオンスライスを乗せたマリネ。モルドバ風にヴィネガーを利かせてあり、特に白ワインに合います。

◇マンガ肉チヨラン:骨付き豚肉の大きな塊りを3日間マリネ汁に漬け込み、3時間オーブンでこんがり焼いたもので、何人かで楽しむパーティーなどにおすすめ。ジューシーで肉はホロホロになり、コラーゲンもたっぷりです。一時は肉が入ってこなくなってメニューから外しましたが、最近仕入れが再開したため復活しました。こちらは予約が必要。

NORCの人気メニュー

■約30種のモルドバワインが揃い、価格を付けられないヴィンテージも

「NOROC」にはモルドバの2大ワイナリーである「ミレスチ・ミーチ」と「クリコバ」のワインをはじめ、およそ30種類のモルドバワインが揃っています。一本2,000円台から数万円まで幅広い価格帯で、お店でよく注文されるのは5,000円前後のワインだそうです。

「ミレスチ・ミーチ」や「クリコバ」といった巨大ワイナリーでは、ワインを積み上げて保管します。そのため、これらワイナリーの高級ワインは積まれても傷つかないように、ボトルが大きめでゴツいのが特徴とか。モルドバワインはほとんど防腐剤が入っていないため、「二日酔いになりにくい」と、倉田さんが自らの経験から語ってくれました。

自慢のワインについて語る倉田オーナー

ワインメニューには載っていませんが、お店には英国のエリザベス女王がお気に入りのミレスチ・ミーチ産「ネグル・デェ・プルカリ」のヴィンテージワインもストックされてます。専用箱と広大な地下ワイナリーであるミレスチ・ミーチの地図付きで、「もし値段をつけたら?」と倉田さんに尋ねたところ「決めてはいませんが、30万円から50万円くらいするのではないでしょうか」ということでした。現在ではほぼ入手不可能な超希少ワインといえそうです。

貴重なミレスチ・ミーチ産のヴィンテージワイン「ネグル・デェ・プルカリ」

ただ、ロシアのウクライナ侵略によりウクライナ最大の港であるオデーサが制圧されてしまったため、モルドバ産の小麦やトウモロコシ、ブドウの葉などの原材料やワインの輸出ができなくなってしまいました。ルーマニア経由などの陸送ルートを思案しているものの、陸送はコストが割高になるので簡単には決められません。

店内には、ウクライナからモルドバに避難している人たちを日本から支援するための募金箱も設けられました。モルドバには現在、40万人以上のウクライナ人が避難しています。この募金は「NOROC」の提携先ツーリストが無償提供する避難民用ゲストハウスの運営など、人道支援に使われます。ディアナさんも売り上げの一部を、ウクライナ支援をしている友人に送金しているそうです。

このような状況の中でも、大使夫婦をはじめ大使館スタッフ、人気ユーチューバー、日本在住者など多くのモルドバ人が集い、母国の美味しい手料理やワインを楽しめる「NOROC」。もちろん、日本人も大歓迎です。これからもモルドバの食文化を広げていく場として、日本に根付いていって欲しいと思います。

(前編はこちら) 前編URL: https://moldova-and-japan.com/?p=1414

NOROC公式サイト : https://www.noroc2014.com/guide

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