モルドバとの交流をつくるメディア

モルドバ出身の映像クリエイター、イリーナさんが語る母国の魅力

 ~日本と共通するのは“おもてなしの心”~

ウクライナのキーウ(キエフ)にある大学で法律を学んでいたモルドバ人のイリーナ・グボグロさんは、日本のアニメや音楽に興味を抱き、2009年に単身で来日。現在、テレビ番組やDVD、イベントなどの映像を手がける都内の(株)千代田ラフトで映像クリエイターとして活躍しています。日本人男性と結婚するなど日本が第二の母国ともいえるイリーナさんに、モルドバの魅力や日本での暮らしについて伺いました。

イリーナ・グボグロさん

Q:まずは日本に来たきっかけを教えてください。

2009年に来日しましたが、その前はウクライナの首都キーウにある大学で法律を勉強していました。日本に来たいと思ったのは、日本のアニメや音楽に興味を抱いたからです。子どもの頃初めて観たアニメが「千と千尋の神隠し」で、幼いながらもとても感動しました。大学時代には美術大学を舞台にした「ハチミツとクローバー」などを観て、日本のアニメはすごいなと。音楽も大好きで、ネットで視聴した関ジャニエイトのファンにもなりました。日本に行ってこういった映像の仕事にかかわりたいと思い、ロシア語も通じる日本語学校を自分でネット検索して申し込み、来日したのです。留学費用は両親が出してくれましたが…(笑)。

Q:日本にはだれか知り合いがいたのでしょうか。

いいえ、知り合いはだれもいませんでした。日本語を学ぶためにまず日本語学校に1年半在籍し、その後映画の専門学校に3年通って映像のことを学びました。就職先を探していると専門学校の先生が映像会社の募集があると教えてくれ、紹介してくれました。その会社が、2015年に就職して現在も勤務している千代田ラフトです。

Q:会社ではどのような仕事をしているのですか。

映像コンテンツの制作会社なので、台本を書いたり、カメラを回したり、編集をしたりなど、ディレクターとして映像にまつわる仕事に携わっています。高校生が観るための教材などを、たとえばドラマ形式にして制作したりします。

撮影をするイリーナさん

Q:結婚なさったのはいつでしょうか。

2019年で、相手は千代田ラフトに入社してから知り合った人で社内結婚でした。社内には撮影や編集のために多くの班があるのですが、仕事で一緒の班になる時もあります。

Q:日本のイメージについて聞かせてください。

一人で来日してまず感じたのは、日本人が優しいということです。通った日本語学校では、校長先生が進学や就職などの世話をしてくれました。仕事も楽しく、みんなと話すだけでさまざまなことが学べます。国によってジョークは違うはずなのに、なぜか日本語のジョークはとてもよく理解できるのです。

Q:日本に来てから困ったことはなかったですか?

入社する時の書類や在留資格の更新など、資料の内容をよく読んで記入するのが大変でした。結婚したので、書類の記入はやや軽減できましたが…。

日常生活で困ったのは、ちょうどよいサイズの服がないことです。身長と肩幅がネックとなってしまうのですが、だいたい年に一回モルドバに帰るのでその時に購入してきます。また、母が服を買って送ってくれたりもします。

(「今、ZOOMの画面でイリーナさんが着ているのは日本の半纏ですね」というインタビュアーの問いに対し)

はい、これは日本で購入しました。暖かく、とても気に入っています(笑)。

Q:モルドバ料理の食材などは日本で入手できるのでしょうか。

モルドバの食材はネットでも入手できず、どこで売っているのかいまだに知りません。ロシア料理用の商材はネット販売されていますが、とても高くて…。なので、自宅では普通の和食などを作っています。よく作るのは簡単なキムチ鍋で(笑)、モルドバワインも少し飲みます。ただ、私は祖父母が自分たちで作っていたワインを飲んでいたので、販売されているワインは自家製ワインにはかなわないかな、という気がしますね(笑)。実際、自家製ワインを作るのはかなり大変なのですが…祖父母のワインはとても美味しいです。

Q:イリーナさんの出身はモルドバのどのあたりでしょうか。また、その地域にはどのような特徴がありますか?

私は南部の自治区であるガガウズ出身です。この地域にテュルク系民族が居住していて、テュルク諸語に属するガガウズ語を話しています。

とにかく畑だらけの土地で(笑)、自分の畑で羊を飼っている人がとても多い。羊のミルクでチーズを作ったり、刈った羊毛を専門の会社に持参して防寒用のジャケットや帽子、毛布や布団、まくらなどを作ってもらったりします。これらは自分たちが使うためのもので、お金を払って作ってもらうのです。

畑で飼っている羊

Q:モルドバ人の人柄について教えてください。

日本人とも共通していると思うのですが、一番の特徴は「おもてなしの心」を持っているという点です。初めて会った人にも、長年の友人のように優しく親切に接します。どの家にも自宅の玄関前に中庭があるのですが、誰が訪ねてきてもおもてなしできるように、その庭を常に美しく清潔に保っていますね。

親や親戚を大事にするのもモルドバ人の信条で、関係性の温かさや伝統行事をとても大切にしています。クリスマスをはじめ何かのお祝いや記念日にはいつも家族や親戚が集まり、ワインを飲んだりご馳走を食べたり、楽器を弾いて歌ったりします。私の父は6人兄弟という大家族なので、年に何回も集まってみんなで楽しく過ごしました。

また、たとえ貧しくてもきちんと結婚式を挙げるなど、モルドバの人たちは伝統行事を大切に守っています。

Q:モルドバには有名なワイナリーなど観光名所も多いのですね。

モルドバに住んでいた時はほとんど地元にいてあまり観光はしなかったのですが、日本に来てからは帰国した時に観光するようになりました。去年帰国した際には、ギネスブックに登録された「ミレスチ・ミーチ」や巨大地下都市の「クリコバ」という2大ワイナリーも訪問。マラソンができそうな巨大なワイナリーの中を車で移動したり、ワインの試飲を楽しんだりしました。やはりこれらワイナリーはとても魅力的な観光名所で、おすすめの場所といえます。

Q:イリーナさんは日本のモルドバ大使館のイベントに参加したり映像を撮ったりなど、大使館のサポートもしています。そのきっかけを聞かせてください。

日本国内には180人くらいのモルドバ人が住んでいるそうですが、私は仕事が忙しいなどの理由もあって特にモルドバ人との交流はありませんでした。ところが2年ほど前に大使館から声がかかり、モルドバ人が自国の民族衣装を着た映像を集めてサイトにアップするというイベントのお手伝いを頼まれました。千代田ラフトの仕事ではなく、あくまでもボランティアとしてです。衣装を着て歌を歌ったモルドバ人歌手のミュージックビデオを作成するなど、大使館経由で日本に住むモルドバ人との交流が生まれました。

こういった在日モルドバ人同士は仲がよく、私も少しずつ知り合いができました。大使館などのイベントにはもっと参加したいのですが、仕事もあってなかなか時間をとることができないのが残念です。みんなで力を合わせ、これからもモルドバの魅力などをアピールしていきたいと思っています。

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


RELATED

PAGE TOP