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<モルドバの文化的・歴史的遺産>(前編)

要塞や修道院、景観保護区など貴重な文化的・歴史的遺産の見どころが満載

15世紀に僧院の集落としてつくられ、オスマン帝国やソ連など周辺諸国に支配されモルドバの首都・キシナウは、ルーマニア語で「新しい泉」という意味です。また、白い石灰岩や大理石で作られた白っぽい建物が多いことに由来し、「白い石の街」の愛称で呼ばれています。

モルドバはブドウの産地でワイン王国として知られていますが、キシナウ市内や郊外などには多くの修道院や聖堂、要塞など、歴史的・考古学的遺跡が残されています。ローマ帝国をはじめモンゴルやスラブなどからの影響を受け、異文化交流が盛んだったことを証明する文化的・歴史的遺産で、各国から観光客が訪れています。

それら貴重な遺産の中から、人気がある見どころを紹介しましょう。

■文化・自然・景観保護区

オールド・オルヘイ

キシナウから約60Kmのオールド・オルヘイは、2013年に設立されたオルヘイ国立公園の中核であり、歴史的・文化的遺産や自然景観を有する文化・自然・景観保護区として、現在ユネスコ世界遺産の登録候補です。ラウ川の峡谷地帯に位置しており、川によって侵食された石灰岩がつくりだす自然の風景は圧巻です。考古学的発掘の結果、旧石器時代、新石器時代、鉄器時代などのさまざまな時代の文化層が発見されました。

紀元前に栄えたダチアン文明の遺跡や14世紀にタタール・モンゴル人が建てた中世都市などで形成され、歴史や考古学の面から貴重な複合エリアで、円形劇場や洞窟、古代要塞、修道院、石灰岩鉱山、石灰岩の崖など見どころが満載。石灰岩の崖にはキリスト教徒の洞窟修道院や庵室、修道士たちの隠遁場所などが残され、中世の修道士が刻んだ信仰を示す石文も発見されています。

ドライバー、サイクリスト、歩行者、登山者などに向けて、オルヘイ公園内には多くの観光ルートが敷設され、トレッキングやロッククライミングも楽しめます。

要塞

ソロカ要塞

ソロカ要塞はキシナウから約150Km離れたウクライナ国境近くのソロカ市にある、モルドバの歴史的な砦です。1499年にモルドバ公国のシュテファン大公が築いたスチャヴァ城を中心とする城塞群の1つで、円形の要塞を囲うようにして造られた外壁の5つの塔が目を引きます。

モルドバ大国建国の父とも呼ばれるシュテファン大公が築いた要塞は木造でしたが、16世紀に5つの砦が等距離に位置する石造りの完全な円形に再建され、世界でも珍しい円形要塞が完成。その後はオスマン帝国の攻撃にも耐えるなどモルドバ史上に残る数々の戦いを経験し、現在は文化財として保存されて街のシンボル的存在となっています。

要塞の壁はまっすぐではなく、発射物に抵抗するために湾曲した形で構築されています。城壁に並ぶ小窓は敵の侵入を見張り攻撃するためのもので、敵を察知した場合は小窓から銃の先を出して攻撃しました。

正面玄関の塔には3つの扉があり、上層階には戦士たちが祈りをささげるための小さな礼拝堂もあります。要塞の内部には井戸や穀物庫、厩舎、執務室など、当時の生活を再現したものが展示されています。

ソロカ要塞は、中世後期の要塞の精巧な特徴を示しています。そのため、おそらく西欧の専門家か、西欧を旅して建築のアイデアを持ち帰った人たちによって建てられたと推察されています。イタリアルネッサンス建築の1つであり、イタリア北部のカプラローラ城など多くの要塞や、イギリス・ケント州のクイーンズボロ城など複数の城と類似した特徴が見られます。

ティギナ(ベンダー)要塞
ティギナ(ベンダー)要塞

ティギナ要塞はキシナウから約50Kmのティギナ市にある要塞で、16世紀にモルドバ公が築きました。ニストル川の土手に位置し、モルドバで最も強固な要塞の1つでした。現在、ティギナの地は国際的にはモルドバの一部とみなされていますが、事実上独立している未承認国家の沿ドニエストル共和国の支配下にあります。

14世紀後半からティギナの地は西欧と東欧を結ぶモルドバ通商路上の要地だったため、ティギナ要塞は軍事と民事両方の要所となりました。オスマン帝国による征服を防ぐ最前線の砦として築かれましたが、その後ロシア帝国に破壊され、19世紀に石材に復元されて現在に至ります。

ティギナ要塞の広々とした敷地の一角には、ロシア正教会も建設されています。中庭には大砲や農機具などを展示。石造りの城壁や一部の塔には登ることができ、ニストル川やティギナの街並が見渡せます。

言い伝えによれば、ウクライナからこの地に逃れてきた政治家・軍人のイヴァン・マゼーパが保有していた純金の荷車は、いまだにティギナ城塞のどこかに隠されているそうです。観光客は要塞だけでなく、要塞の模型などが展示された敷地内にある要塞歴史博物館の見学もできます。

■凱旋門

勝利の門(凱旋門)

キシナウ市内の外せない観光スポットとして挙げられるのが、「勝利の門」と呼ばれるランドマーク的存在の凱旋門です。モルドバがロシアの支配下にあった19世紀にロシアがオスマン帝国との戦争に勝利を収めた記念として、1840年に建てられました。パリの凱旋門と比べるとかなりこじんまりした門ですが、内側にはモルドバ国旗が掲揚されていて、外壁には繊細で美しい彫刻が施されています。

2階建てで四方にアーチがあり、外観全体が正方形です。2011年までは、戦時中に使われた大砲から製造された約6,400 Kgの巨大な鐘が設置されていたとのことです。正面には時計が埋め込まれ、夜になると門全体がライトアップされます。

市中心部のシュテファンチェルマレ大通り沿い広場にあり、周辺には観光名所の東方教会大聖堂や国会議事堂などもあるので、合わせて観光できます。

(後編に続く↓)

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