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「モルドバと日本の架け橋になりたい」と語るミハエラさん

大好きな日本文学をルーマニア語に訳して出版するのが夢

中学生の頃から日本文学に惹かれていた園田ミハエラさんは、モルドバ国立大学の講座や国内に日本文化を広めるためのイベントで日本に関するさまざまなことを学びました。イベントで茶道の準備をしている時にボランティアの日本人男性と知り合い、その「一期一会」をきっかけに結婚して来日。現在も日本の文学・文化への愛は増すばかりで、名古屋で子育てをしながら、翻訳や通訳、日本の魅力をモルドバに紹介する活動などを行っています。

Q:日本に来たきっかけを教えてください。

ボランティアとしてモルドバに来日していた日本人男性と知り合って結婚し、5年前に日本に来ました。私はモルドバのNPO団体「モルドバ日本交流財団」でボランティアをしていて、夫とはキシナウで毎年開催されていた交流財団のイベント「文化祭The Spirit of Japan」で初めて会ったのです。

財団のイベントはコロナで休止になるまで、日本文化をモルドバに紹介する「文化祭」として年に1回開かれていました。日本語を教えてもらえるほか、茶道や書道、生け花、空手、剣道、着物や浴衣の着付けなど、さまざまな日本の伝統文化を体験することができます。私も毎年参加してボランティアとしてお手伝いし、書道を習ったり着物を着せてもらったりしていました。

「モルドバ日本交流財団」は日本とモルドバの友好を目指し、民族が異なる両国の企業や学校、団体の交流の架け橋になるために2002年に設立されました。残念なことにコロナウイルスの流行でここ数年「文化祭The Spirit of Japan」は中止になっていましたが、今年は無事に開催できました。facebookで文化祭の様子を見て、懐かしさ、嬉しさ、故郷への恋しさが生まれました。私にとってモルドバで行われるこの文化祭はとても特別な意味を持っているといえます。

モルドバのキシナウで開催されている「文化祭The Spirit of Japan」にて

Q:ミハエラさんはいつ頃から日本文化に興味を抱いたのでしょうか?何かきかっけなどはありますか?

もともと、中学生の頃から日本文化に興味があり、きっかけはルーマニア語に翻訳された日本文学を読んだことです。谷崎潤一郎の小説を読んだ時に「これは私が今までモルドバで触れてきた文化とはまったく違う!」と衝撃を受け、もっともっと日本の文学や文化を学びたいと思いました。それから川端康成から村上春樹まで、日本文学をどんどん読みました。

Q:モルドバではどうやって日本語を学んだのでしょうか。

私はキシナウにあるモルドバ国立大学に入学し、翻訳や通訳を専門に学んでいました。ただ、当時はモルドバにまだ日本大使館もなく、日本語を学ぶ場所や使える場所もなく、周りの人たちに「日本語を勉強してどうするの?」とも言われましたが、ともかく日本語を学びたいという情熱がとても強かったのです。

モルドバ国立大学がモルドバ日本交流財団と連携して日本語の講座を設けたので、私もそこに通いました。モルドバで日本語を学べる唯一の日本語学校であり、子どもから大人まで学べます。授業料はかかりますが、大学と契約書を交わして4年間日本語コースの学生としてそこで勉強するのです。ただ教科書や講義はすべて英語のため、日常会話程度の英語力は必要となります。

モルドバでは週に3回程度しか日本語を学べませんでしたが、日本に行けばもっと学習機会が増え、言葉を生かす環境もあるのではないかと感じていました。

Q:実際に日本に住んでみて、日本をどのように感じましたか?

日本に来て分かったのは、モルドバで学んだ日本語と本当の日本語は少し違うということです。日本とモルドバで一番違うのは、日本では言葉以外に顔の表情や声の変化、からだの動きなどでコミュニケーションする「ハイコンテクストコミュニケーション」がとても大事だという点です。会話にも「空気を読む」ことなどが求められ、ストレートに物事を伝えるモルドバのコミュニケーションとは大きく異なるので驚きました。そのため、初めの頃は自分の言葉が誤解を招いてしまうこともあり、私にとっては大きなチャレンジでした。

Q:日本のモルドバ大使館のイベントに参加したことや、日本に在住するモルドバの人との交流はありますか。

まだお会いしたことはないのですが、三重県在住のステラさんとは日本に来てからfacebookで知り合いました。モルドバ大使館でいろいろなイベントが開かれているのは知っているものの、東京までは距離がありまだ子どもも小さいため、イベントに参加した経験はありません。ただ、外国に住むモルドバ人はその国の大使館で投票ができるため、モルドバ大統領選挙の時は行きました。

娘さんとおそろいの民族衣装で

Q:モルドバで日本文化を広めるために、日本にいてできることはあるでしょうか。

モルドバの「文化祭The Spirit of Japan」では通訳やモデレータなどをしていましたが、今感じているのは、茶道や着物、小さなものでは折り紙など、モルドバの文化祭で使える日本のグッズを入手したいということです。モルドバでは日本語の本や教科書が少ないので、ビギナー向けの読みやすい本や、子ども向けのゲームなどがあればと思います。日本にいるので、そういった役目を果たせればいいなと思っています。

現在は3歳と1歳の子どもを育てているので特別な仕事はしていませんが、子育ての合間に日本語の本をルーマニア語や英語に翻訳しています。勉強したいといってきた日本人にルーマニア語を教えたことや、日本気象協会が開催したインターンシップのイベントで通訳をしたこともあります。

Q:日本語がとてもお上手ですが、日本語の小説も読むことができるようになりましたか?

漢字なども少しずつ読めるようになったので、日本語で書かれた小説にもチャレンジしています。夏目漱石を読んで興味を持ったのですが、ルーマニア語には翻訳されていないようなので、自分で翻訳してモルドバの人たちに読んでもらいたいと思っています。夢は、大好きな日本の小説をルーマニア語に翻訳して出版することです。

夫とはモルドバの「文化祭The Spirit of Japan」で茶道の準備をしている時に知り合いました。お互いに自己紹介する前に、「一期一会(人との出会いを一生に一度のものと思い、相手に最善を尽くしながらお茶を点てること)」の話になり、これはまさに「出会い」だなと感じたのです。その縁をこれからも大切にして、モルドバ人に向けて日本文化の紹介にいそしむなど、モルドバと日本の架け橋になることができればと思っています。

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