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画家のステラさん、「自分の気持ちを大事にしながら“見えない世界”を描く」

夫婦で楽しむモルドバの手料理とワイン

モルドバで結婚式を挙げた後に日本に在住し、3人の子どもを育てながら画家として活躍する小林ステラさん。絵を教えたり、チャリティーやギャラリーで絵を紹介したりと、精力的に活動しています。好んで絵のモチーフに使うのは正教会の聖母マリアのような女性像で、モルドバ大使館のイベントやメッセージビデオにも作品を提供。自宅では家族のために得意のモルドバ料理を作り、ご夫婦でモルドバワインも楽しんでいます。

自作の前で家族と

Q:日本人の小林貴虎さんとのご結婚を機に日本に来日し、そのまま在住されたのでしょうか。

はい、まず2003年に日本に来て婚姻届けを出し、2004年にモルドバで結婚式を挙げました。その後ずっと日本の三重県津市に住んでいます。夫と知り合ったのは、アメリカのインデアナポリス。私はモルドバの大学で地理を勉強し、そのあと渡米してインデアナポリスの学校で美術を学んでいました。夫はちょうどその時ボランティア活動でインデアナポリスに来ていて、そこで知り合ったのです。

Q:モルドバでの結婚式はどのようなものでしたか?

夫の両親などもモルドバまで来てくれ、私の家族や親戚も集まってとても賑やかな式でした。モルドバでは式の前に新婦の親戚回りをして挨拶する習慣があるので、夫は行く先々でその家が作っている自家製ワインでもてなされました。それぞれ味が違い、どの家でも「うちのワインが一番美味しいから」と薦めてくれたのですが、何軒か回ると酔ってしまったそうです(笑)。

実家は農家なので、飼っていた鶏やアヒルが披露宴の豪勢なご馳走になりました。披露宴はお昼過ぎから始まり、なんと翌日の朝まで続いたのです。

Q:結婚後は日本でどのように過ごされましたか。

結婚した時、夫は実家が経営するギフトの小売会社に在籍しプログラマーをしていました。彼は出張することも多く、私も結婚後しばらくは実家の会社を手伝っていました。日本に来て一番大変だったのは日本語を覚えることでしたが、手伝いながら回りの人とたくさん会話したので、言葉を覚えるのにとても役立ちました。

その後、夫は市会議員を経て県会議員となりました。夫によれば、選挙の応援時に私が片言で「よろしくお願いします」と挨拶していたのが、近所の人や支援者の話題にのぼったそうです(笑)。議員としての役割がある彼を手伝うのはなかなか難しいのですが、義父もかつて市会議員だったので、支援者対応は義母がサポートしてくれていて助かります。

Q:お子さんが3人生まれて子育てが大変だったでしょうが、絵を描くことは中断していたのですか?

育児は大変でしたが、モルドバにいる実母の代わりに義母が子育てもサポートしてくれました。絵については夫が「中断せずに続けた方がいいよ」と言ってくれ、1人目の時から子育てしながら描き続けたのです。

Q:今ステラさんがいるお部屋はギャラリーのように広く、作品がたくさん飾ってあります。

ここは自宅の一室なのですが、私のワークルームとして使っていて、普段はここで絵を描いたり子どもたちに教えたりしています。小学1~6年生向けに絵画教室を開いていて、生徒さんのお母さんが一緒のことも多いのです。小学1年~中学3年生には、ここで英語も教えています。

Q:そのほか、絵についてはどのような活動をされていますか?TikTok やYouTubeにもステラさんの作品や、イベントで作品を紹介する様子などがアップされています。

日本人ジャズシンガーの友人とギャラリーを借りて絵を展示し、歌と絵を紹介するパフォーマンスなどを実施しました。絵を購入してくれるファンもいて、チャリティーイベントで作品を展示して売り上げを寄付するなどの活動もしています。

展覧会にも作品を出品し、所属する美術団体「旺玄会」主催の公募展覧会「旺玄展」では、ドラゴンをモチーフにした赤と青対の絵が入賞。県や市の展覧会にも出品し、複数回の入選を果たしています。

Q:モルドバ大使館のイベントなどにも参加したり絵を提供したりしていますよね。

モルドバ大使館が製作したプロモーションビデオでは、モルドバ人シンガーのビオリカさんが歌うバックに私が描いた聖母マリアの絵が展示されています。

また、モルドバ人ならば誰でも知っているルーマニア出身の偉大な詩人をお祝いする「Mihai Eminescu(ミハイ・エミネスク)の詩を称える日」のために、ミハイの詩をモチーフにした絵を描きました。2月に大使館で開かれた「詩を称える日」では、大使館の人たちや参加者でその絵を鑑賞しながらみんなで詩の朗読をしました。

春を祝う3月の「Martisor(マルツィショール)のお祝い」もモルドバでは必ず行われる伝統行事で、厳しい冬に続く春の訪れと生命の再生をお祝いします。幸運をもたらしてくれる赤と白の紐で作った飾りや人形などを、友達や先生など仲がよい人に贈るという習わしです。

このお祝いには、春を象徴する女神が冬を象徴する悪い魔女と戦い、勝利を収めると春が来るという話が伝わっています。その話を題材に私が絵を描いて紙芝居を作り、それをビデオに撮ったものが、大使館で開かれた「マルツィショールのお祝い」のイベントで放映されました。

Q:絵のモチーフは聖母マリアや女性が多いようですが?

実家の宗教は正教会で聖人やマリア様を描いたイコンが多く飾ってあり、モルドバ在住の母が絵のヒントになるようなイコンのモチーフをスマートフォンで送ってくれるのです。私が描く絵はもちろんオリジナルですが、ヒントとしてとても役に立っています。

私の絵は、自分の気持ちを大事にしながら“見えない世界”を描くもの。モルドバから来て間もない頃で子育てしている時に描き、県展で初入賞したのが「Dor de mama(懐かしいお母さん)」というタイトルの絵。大きな母の手と小さな子どもがモチーフになっていて、母に会いたいという懐かしむ気持ちを表現したものです。

Q:大使館でのイベントなどに参加され、モルドバ人のお知り合いも増えましたか?

日本に来てから、モルドバ人を探そうと思って検索したら4人がヒットしました。そのうちの1人であるナタリアさんはなんと同じ津市に住んでいて、偶然にもモルドバで私の姉と同級生で近所に住んでいたという人。日本で幼稚園の先生の資格を取り、現在も働いています。彼女にはいつも「マルツィショールのお祝い」で私が作った飾りを贈っています。

また、群馬県に住むモルドバ人のディミトリアーナさんも検索で見つけた人で、やはり留学中に知り合った日本人の夫と一緒に津市まで来てパーティーに参加してくれました。今もお付き合いが続いています。大使館のイベントにはなるべく行くようにしているので、その機会に会ったり、イベントでいろいろなことを一緒にやったりしています。

Q:ご家庭でモルドバ料理を作ったり、モルドバワインを飲んだりしますか?

モルドバ料理は夫婦とも大好きで、コロナ禍でステイホームの時はYouTubeに「ステラちゃんのモルドバ料理教室」というモルドバ料理チャンネルを作ってアップしていました。民族衣装を着た私が、サルマーレやジャーマ、ママリーガといったモルドバの代表的料理を紹介しながら作るというもの。夫が撮影係で、私の説明を補足したり、時によってモルドバの政治や歴史の話を盛り込んだりする内容でした。

よくモルドバ料理を作りますが、特に誕生日や記念日にはジャーマやウンブルティータというチーズを挟んで巻き何層にもなるパンを必ず作ります。そして、モルドバワインを開けて料理と一緒に楽しみます。

夫婦ともワインが大好きですが、以前の夫は特にワインの味が分かるという程ではなかったそうです。ところがモルドバの結婚式で親戚中を回った時に、それぞれの家で自家製ワインの味がこんなにも違うのだということを知り、それから好んで飲むようになったとか(笑)。

彼はモルドバワインについて、「辛口が多くとても自分の好みに合っている。他のワインと圧倒的に違うのはブドウの味が濃く残っていることで、本来の手法で正直に作っていることが分かる」と言っています。

中でも素晴らしいのは、モルドバを代表するクリコバワイナリーでは赤のシャンパンを作っていること。普通は白だけですが、クリコバでは赤を自然発泡させてシャンパンと同じ手法で作るそうです。赤からシャンパンを作るのはとても手間がかかるので、他のワイナリーでは作っていないらしく、とても貴重といえます。

これからも絵を描きながら、故郷のモルドバ料理やワインも楽しみたいと思っています。

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