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「ワインはモルドバの歴史とつながっている!」

ドゥミトル・ソコラン在日大使に聞くモルドバの魅力~

ドゥミトル・ソコラン在日大使

ドゥミトル・ソコラン氏は2021年12月から、日本のモルドバ(正称・モルドバ共和国)特命全権大使を務めています。ウクライナとルーマニアに接する東欧のモルドバは、国の面積こそ日本の九州と同程度と小規模ですが、温暖な気候と肥沃な土壌に恵まれ壮大な牧草地やブドウ畑が広がっています。古くからワインづくりが盛んで“欧州ワインの発祥地”ともいわれ、年間約2億リットルのワインが製造されているワイン大国です。歴史的・考古学的な遺跡やユネスコ世界遺産などの見どころも多く、“伝統を守りおもてなしの心を持つ”国民性が特徴とされています。赴任後間もないソコラン大使に、そういったモルドバの魅力を語っていただきました。

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Q:モルドバといえばまずワインですが、モルドバ人とワインの関係性について教えてください。

モルドバはまだ日本ではあまり知られていない国だと思うので、まずはこうしてモルドバについて話せる機会をいただけたことを嬉しく思います。ワインの話ということであれば、私はいくらでも話せますよ(笑)。

モルドバ人にとってワインは毎日の暮らしに欠かせないもので、日々の生活のさまざまな場面でワインが登場します。年間2億リットルといわれているモルドバ国のワイン生産量の中には、実は個人が家で作っているワインの量は含まれていないのです。個人の作るワインを加えれば、もっと多くの量となるでしょう。

各地方に住む人たちの多くは自宅に小さなブドウ畑を持っていて、それぞれの手法で自家製ワインを作っているのです。料理と一緒に毎日食卓に並んでいて、日常の食生活には欠かせないほど重要で身近な存在です。モルドバは昔から農業が盛んで、ワインだけでなく多くの農園がありますが、夏の暑い日には作業の途中にワインでノドを潤す人もいますよ(笑)。

Q:モルドバワインは欧州ワインの発祥地ともいわれ、ワイン史のうえでも重要な位置づけにあると聞いています。味などにはどのような特徴がありますか?

そう、ワインはモルドバの歴史とつながっているのです。国内にはたくさんの遺跡があり、掘ってみるとブドウの種が残っています。それを見ると、モルドバでワインが作られ始めたのはおよそ5,000年前ということが分かります。ヨーロッパ他国のワインは一番古くても約2,800年前頃から作られているので、モルドバのワインはヨーロッパでは一番歴史が古いといわれています。

モルドバとヨーロッパ他国では、ワインの作り方も違います。もともとモルドバワインはフェテアスカ・アルバ、フェテアスカ・ニャグラ、フェテアスカ・レガラ、ララ・ニャグラ、ヴィオリカなど土着品種の1種類を使って作っているのですが、多品種をブレンドせずに1品種だけで美味しく作るのはとても難しく、高い技術が必要となります。現在はモルドバの土着品種のほか、ドイツやジョージアなどヨーロッパのさまざまな国の品種も栽培するようになりました。

ただ、モルドバは気候が温暖なため、こういった海外品種を使ってワインを作っても、モルドバで作った方が他国で作るよりもが美味しくなるといわれてます。モルドバには「ジプシーの職人が自分で作ったハンマーを褒める」ということわざがありますが、モルドバ人はワインについてはそう思っているのですよ。

従来からの手法で1品種からつくったモルドバワインは色が濃いめで個性が強く、力強い味が特徴。日本のバイヤーさんたちが言うには、和食ととても相性が良いとのことです。ただ、現在は海外品種を混ぜるなどして、ヨーロッパ人が好むエレガントでソフトなブレンドワインも作っています。ただ確実に言えるのは、モルドバワインとヨーロッパワインではやはり味が違うということです。

Q:ワイナリーが多く、ギネスブックに登録されているワイナリーもあるそうですが?

ワイナリーは古いものも新しいものも数多くありますが、中でも「ミレスチ・ミーチ」と「クリコバ」いう2つのワイナリーが有名で見学もできます。両ワイナリーとも地下深くにあるため、ワインの熟成に最適な温度と湿度が保たれています。

「ミレスチ・ミーチ」のワイナリーは地下85メートルの深さに作られ、長さは200キロメートル以上と世界最長です。150万本以上のボトルを有していて、2005年にギネスブックに登録されました。

「クリコバ」ワイナリーは深さが80メートル、全長70キロメートルで、巨大な地下都市として名高く、それぞれ名前が付いた通りがあります。スパークリングワインを伝統的な手法で作っており、クリコバワイナリーの貯蔵庫の中で最も古い1902年製造のワインが保存されています。

Q:モルドバの食文化について教えてください。

ワインはモルドバの伝統料理とも相性が良いといえます。モルドバの領土は3万3,000平方キロメートルと狭いですが、地域によってさまざまな民族が住んでいます。どの地域にも美味しい食べ物があり、伝統料理が引き継がれている「融合食文化」と言えるでしょう。多くの観光客たちが地方を訪れ、目の前で作られる伝統料理をワインと一緒に楽しんでいます。

モルドバの代表的料理は「ザーマ」で、チキンスープに野菜と麺類を入れた、ラーメンのようなものです。味付けとして麦の糠を発酵させた調味料の「ボルシゥ」を入れると酸味が出て、とても美味しい。

国民食と言えるほどポピュラーな「ママリーガ」は、トウモロコシ粉から作った練り物で、メインディッシュにも付け合わせにもなります。柔らかくナイフでは切りにくいので糸で切り、手を使って羊のチーズや豚肉を細く切って炒めたものなどと一緒に食べます。

Q:地域により民族が分かれているそうですが、国民性などについてはいかがでしょうか。

モルドバは南部・中央部・北部の地域に分かれ、それぞれ特徴があります。南部にはガガウズ人という民族が多く、トルコ語に近い言葉を話し、宗教はキリスト教です。首都のキシナウがある中央部は、他民族とかかわりが深かった地域のため融合民族が多くなっています。北部はウクライナ系やロシア系モルドバ人が多く、それぞれ地域によって文化も少しずつ異なります。

料理文化だけではなく、音楽、ダンス、民族衣装などもそれぞれ異なりますが、そういった各地域の文化が合わさることでモルドバをより豊かにしていると思います。

地図を見るとわかりますが、古代より現在のモルドバ周辺はヨーロッパやアフリカなどの人流が交差する地域になっていました。200万年前に、初めてアフリカから現在のモルドバ周辺を通ってヨーロッパに移動した人たちがいたとされていますが、そういった融合民族なのでモルドバ人には“美形”が多いといわれています(笑)。大使館の人たちだけ見ても、いろいろな地域からの民族が混ざっていますよ。

国民性については、何よりも伝統を大切に守る国民であるというのが特徴で、この点は日本人と共通しています。モルドバ人はたとえ裕福でなくても、結婚や子どもが生まれた時などは必ず伝統にのっとって式を行います。私はこれまで他の国でも現地に在住する多くのモルドバ人に合いましたが、みんなそういった伝統を守っていました。

Q:大使になって間もないですが、最後に日本や日本人についての感想を聞かせてください。

2021年11月中旬に日本に着いたのでまだ日は浅いものの、実はそれ以前からさまざまな仕事で日本とかかわりを持っており、多くの日本人と接してきました。

日本人は勤勉で礼儀正しく、几帳面、時間に正確など多くの美徳を持っていると思います。さらに、助け合いの気持ちを持った優しい人ばかりだと、実際に自分の目で見て感じています。日本の街はとてもきれいで工事現場などにもゴミひとつ落ちていないし、とても清潔だと感心しました。

日本はきちんと自国の文化を守りながら発展している国であり、赴任できてとても嬉しく思っています。

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