両国の架け橋を目指す「モルドバ日本交流財団」とキシナウで毎年開かれる「文化祭」
日本人にとってはまだ馴染みが薄いモルドバですが、実はモルドバでは多くの人たちが日本に大きな興味を抱いています。日本語をはじめ、茶道や剣道など古くから知られる日本文化に加え、アニメやJポップなどの若者文化も愛され親しまれているのです。その背景には現地で日本文化の促進に注力する「モルドバ日本交流財団」の活躍があり、首都のキシナウで毎年開催される「文化祭The Spirit of Japan」の存在も大きいといえます。
日本語をはじめさまざまなプログラムを提供
モルドバ日本交流財団は、モルドバと日本の友好関係を広めるために2002年に設立されました。日本の言語、文化、歴史などを研究したり学んだりするプログラムをモルドバで提供することにより、学校や企業など両国のさまざまな団体が交流するための架け橋を目指しています。
具体的な活動として、まずは日本語を学べる語学のプログラムに力を入れています。受講生はひらがなやカタカナから始まり、漢字、日常会話、文章作成、丁寧語など初級から上級まで段階的なカリキュラムを学び、さらに日本の地理や歴史、経済、政治、文化、伝統芸能などの知識を身に付けます。
モルドバ日本交流財団はキシナウにあるモルドバ国立大学と連携して日本語講座を設けており、ここはモルドバで日本語を学べる唯一の日本語学校となります。子どもから大人まで学べ、受講生は大学と契約書を交わして日本語コースの学生としてそこで勉強するそうです。日本語のスピーチコンテストや日本語能力試験といった日本語に関するイベントも毎年実施されていて、これまでに多くの人が参加しています。
日本語以外では、大学や企業、NPO、国際機関機関などと協力し、マーケティングや財務などのビジネス専門家を育成するためのトレーニングセッションを実施。シンポジウムやワークショップを開催し、日本へのスタディツアーの企画なども行ってます。
キシナウのイベント「文化祭」で体感できるさまざまな日本文化
日本の伝統文化を体感できる「文化祭」はモルドバ日本交流財団によって2015年に第1回目が開かれ、以後毎年キシナウで開催されてきました。モルドバ国内において日本文化に触れられる場を提供することで、両国の文化交流を促進し、モルドバで新たなビジョンをつくり出すことが目的です。文化祭の開催は以下の2つの視点から成り立っています。
<国際交流の視点>
・日本文化や日本語学習への関心を喚起
・日本の伝統的文化や習慣の理解を深める
・文化交流を通して日本とモルドバの関係強化を促進
・モルドバ日本交流財団の活動に対する理解を促進
<教育的効果の視点>
・文化交流を通して学習者の個性の伸長を図る
・集団として行動するための協調性とリーダーシップを獲得する
・日本人との会話で実践的なコミュニケーション能力を身につける
・学習者が国際社会で活躍するために必要な実践的経験を積む
文化祭は日本文化をモルドバに広めるきっかけとなる場として、大きな役割を果たしているといえるでしょう。
文化祭で体感できる日本の文化は、下記のように多種にわたります。伝統的な日本古来の文化だけでなく、アニメのように現代の日本社会を代表するようなプログラムも含まれ、若い層にも人気があるそうです。
日本語講座、書道、茶道、生け花、空手・合気道・剣道、着物・浴衣の着付け、コスプレ、 ビーズアクセサリー(和風デザイン小物、キャラクターグッズ)、日本料理(寿司・たこ焼き・おにぎり・もち)、メイドカフェ、日本の遊び(輪投げ・風船つり・けん玉・型抜き・囲碁・将棋)、折り紙、七夕、水引と風呂敷、タトゥー、踊り・ダンス、 紙芝居、怖い話、etc…。
コロナ禍の自粛を経て「文化祭」が3年ぶりに復活
コロナ禍の影響でここ2年間は開催を自粛していましたが、ようやく今年6月に「文化祭The Spirit of Japan」が3年ぶりに再開されました。久々に復活した今回は関係者や参加者の感激もひときわ大きく、とても盛り上がったそうです。
「文化祭」ではモルドバ特命全権大使の片山芳宏大使が挨拶し、日本の和服・浴衣やメイドコスチュームを着た女性たち、赤と白のハッピを着た人たち、剣道着・柔道着姿の人たちなどがパフォーマンスや踊りを披露。茶道のお点前や習字の書き初め、和太鼓の演奏、ソーラン節の歌と踊り、七夕の飾りつけなど、さまざまな実演が繰り広げられました。人気アニメ「千と千尋の神隠し」のキャラクター「カオナシ」も登場し、世代に関係なく日本の伝統文化から現代文化までを体感できる場となっていました。日本語ゲームや折り紙など、多くのワークショップも開かれたとのことです。
この「文化祭」で茶道の準備をしている時に知り合った日本人男性と結婚し、日本で暮らしているモルドバ人の女性もいます。日本で開かれるイベントでモルドバ文化を紹介するなど活躍しており、「文化祭」はまさに日本とモルドバの架け橋になっているといえるでしょう。
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